悪あがき。夏が終わる。 暑い、夏が。 ツクツクボウシが鳴き散らす中、 トンボが道路の向こう側をついっと横切る。 降り注ぐ熱はこんなにも暑いのに。 照り返す光はこんなに眩しいのに。 もう9月だ。 ようやく9月なのかもしれないけど。 ここは“もう”の方を使いたい。 だって実感がない。 だから、 終わってしまった夏にしがみつくのを許してもらえないだろうか。 「しまったぁぁぁぁぁぁ!!!!」 幸せな夢から覚めると同時に、辛うじて足に引っかかっていたタオルケットを蹴り上げ跳ね起きた。 太陽はまだ顔を出したばかりで網戸から入ってくる風が涼しい。 日中はともかく、明け方と夕方はずいぶんと過ごしやすい環境になっていた。 だが、そんな事実はこの際関係ない。 ほのかに薄暗い中、部屋の主人は後悔ここに極まれりとばかりに顔を青くしていた。 「しまったしまったしまったしまった・・・・・・」 ブツブツと不気味に呟きながら、クローゼットを漁り引き出しの中をかき混ぜる。 掘り返して見付けたものを片っ端から引きずり出しては、次の物を探すため場所へ移動する。 そうしてベットに積み上げられたものの下から、ナビの声。 早朝に起こされた挙げ句、大量の物の下敷きというあまりの仕打ちに、非難の声があげられている。 が、埋もれてしまったPETからではたかがしれている。 案の定オペレーターはナビの言うことなど右から左でさようなら。 そんなことを聞いてる暇も相手にしている余裕もないと喚くが、何か閃いたらしく急に動きを止めた。 「メール出す。メンバーの人たちに『至急集合してください。持ち物は追って連絡します』って」 内容を不審がるナビに答えず、再び部屋の発掘に戻ってしまう。 ナビは諦めて言われた内容をメールに書き、送信した。 そうしている間に発掘は終わり、今度はその成果とも言える積み上げられた山に手が伸ばされた。 「もう9月?9月?!・・・8月っていつ終わったわけ?まったく・・・信じられない・・・・・・」 ひたすら呟く合間に緑色のビニールに息を吹き込む。 苛立っているからなのか、それとも息を吹き込んでいるからなのか、顔は真っ赤に染まっている。 おそらく、その両方だろうが。 少しずつではあったがビニールの中に空気がたまっていく。 圧力で逆流する空気が栓で止められついに形を顕わにしたソレは、カエルをモチーフにした浮き輪だった。 「私、まだ・・・海行ってない・・・まだ、夏は終わってないんだからぁぁぁぁぁ!!!」 DNN人気アナウンサー緑川ケロは、夏グッズに埋もれ半泣きだった。 『ケロ、海はもうクラゲでいっぱいでケロよ・・・?』 「そんなこと、知ってるわよ馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!!」 10分後、 トードマンから熱斗等チーム・オブ・カーネルのメンバー達に向け、 謝罪のメールが送られることになる。シリアスっぽく書きだして置いてギャグ風味。 こんなケロさんもアリですよね!!?? ・・・(撃沈) えーっと、いつの間にか8月が終わってしまいましたね。 海は人いっぱいであんまり好きくないのだけれど。 やはり夏=海ではないかと。 あ、今年夏っぽいことしてないや(汗)