03.ウワサ
「ねぇスイウ、知ってる?」    唐突に思い出したのは、数日前に聞いたある噂。寝転がって読んでいた小説はちっとも頭に入らなくて。 他にすることもなく、だからこそ訊けた。   『何をだ?』 「最近広まってる噂だよ。二人の最年少ネットセイバー。驚くなかれ小学五年生だってさ」    小学五年生。それは、ちょうど僕がある決心をした年齢と重なる。だから、よけいに気になったのかもしれない。    起きあがってPETにいるスイウと向かい合った。   『デマだな』    簡単に一蹴された。予想通りの答えに漏れる微笑。  まぁ、こんな突飛な噂、頭から信じる方が可笑しい。正直、僕も最初はそう思ったのだから、他人の事は言えない。  だけど、この話はそれだけではなかった。   「いや、デマじゃないんだ。これ、そこらのBBSとかじゃなくて、ネット警察内で広まってるからね。 多少の過大評価や情報に誤差があっても、完璧な嘘じゃないと思う」 『・・・・・・強い、のか?』 「多分ね。ていうか、そうでなけりゃ無理でしょ。何でも総監直々にスカウトしたとか」 『そうか』 「すごいよね〜、僕らの上がいたよ」    僕らもネットセイバーになった当初は、学生が勤めるなんて異例だとか騒がれた。  それでもいい加減うっとうしかったのに。総監は何を考えているんだか。   『それで?』    スイウが一見何の脈絡も無しに、淡々と訊いてくる。   『一体本題は何だ』 「ありゃりゃ・・・、婉曲の必要無しですか?」 『何年私がお前と居たと思っている。話せ』    いつも唐突でちっとも優しい言い方じゃないけれど、彼女の言葉に含まれる暖かさを僕は知ってる。  こんな時、スイウが居てくれて良かったと思える。少なくとも、僕は一人じゃないと思えるから。 彼女は、僕が何でも話せる相手で居てくれるから。甘えさせてくれるから。   「・・・うん。会ってみたいな、って思って。会えたらいいなって。どんな子たちなんだろう。 その子たちが強いのは多分バスティング能力だけじゃない。精神も。 僕が忘れてしまった子供だけの強さをきっとその子たちは持ってる」 『・・・・・・』 「だから、さ。会えたら何か分かるかもしれない。変えれるかもしれない。思い出すことが出来るかもしれない。 そう、思ったんだ」    あのとき、あの選択をしたとき、何かを落としてきてしまった気がする。  そのせいで、何かがすっとずれてきてしまった。   『それは、ただのお前の希望的観測だろう』 「あはは、かもね」 『だが、私も会ってみたいとは思う。その強さがどこから来るのか、私は知りたい』    遠い目をしてスイウが言う。彼女がこんな事を言うのは初めてだった。だから、   「・・・・・・そっか。だったらなおさら会わなきゃね」    僕らは過去に捕らわれている。抜け出すのに必要なのは――?            
何かもうお決まりなんだけどさぁ。 お題にあってねぇよ、これ。