どうしてだか、僕の記憶は雨の景色から始まる。本日の天気は曇りのち雨、のち−−−「雨の日は嫌いだ」 隣に立つ少年が呟いた。 視線の先は雨。 私と彼は、僅かなひさしの下で身を寄せ合って雨が止むのを待っている。 基地を出発した時からすでに空は曇っていた。 気に掛けてはいたが、どうしても降る時には降るのだから仕方がない。 雨天時用の装備も十分では無いことから晴れるまで進行を中断することにした。 急ぎたいのは山々だが、積み荷に支障をきたすわけにはいかないからだ。 「曇りは良い。忌々しい太陽を消してくれるから。だけど雨は駄目だ」 言葉を続けながら、彼は紫紺の髪につたった雫を振り払った。 行動がしにくいからか、と訊けばそうではないと否定された。 「雨ぐらいで任務を失敗する技量なんて三流の証拠。そんなことで僕は揺るがない」 「だったら何故?」 彼は沈黙した。 ただ、会話を始める前からずっと同じ方向だけを見ている。 そこは雨のヴェールを被った天変地異で荒廃してしまった大地。 だがいくら変わり果てた景色でも、空から落ちてくる雨は依然として地下へと染み込んでいく。 この循環は今も昔も変わらない。 「覚えてはいるんだ。僕を産んだあの人のこと。朧気にだけど」 ともすれば雨音にかき消されてしまうほどの声で彼は話を再開しだした。 私の位置からは彼がどんな表情をしているのか分からない。 量の多い前髪が壁のように私からの接触を拒む。 だから私は黙って彼の言葉を聴く。 「こんな天気で、服に染み込んでくる水が冷たかった。 唯一暖かかったのは、あの人の手の平だけだった。 でも、その手も時間が経つにつれて冷えていった。 僕だけが、取り残された」 視界の片隅で何かが動いた。 その方向に視線を向ける。 彼は手を前に伸ばし、雫を受け止め、握り潰した。 「こんなもの・・・」 その瞬間、見えないはずの彼の顔が、泣き出しそうに崩れた気がして。 気がつけば私は理由の無い衝動に駆られ彼を抱き寄せていた。 突然のことに緊張させたその肩はあまりに細く、またその身体はあまりに小さかった。 「私は当分冷たくならんよ」 「え?」 「君の傍には私が居る。それでは駄目か?」 彼はここで初めて顔を上げ私の方を見た。 いつもの無表情が僅かに崩れ、少しだけ見開かれた瞳は視線を泳がせていた。 三秒ぐらいの間があっただろうか。 彼は恐る恐るといったように自分の手を私の手に被せると、その温度を確かめるように握り締めた。 顔は再び俯かれたが、身体の緊張は解かれていた。 「大丈夫だ、キリサキ。一人にさせはしない」 強くも脆いこの子を守ろうと。 私は強い誓いと共に、彼の頭をあやすように撫でた。 「・・ありがとうございます、隊長・・・・・・」 いつしか雨は止み、太陽の光が雲の合間から姿を現していた。いえ〜ぃ(瀕死) ついにやっちまった★ 覆面隊長×キリサキ inビヨンダード 輸送隊のお仕事中 えっと、神サマ下りてきました その結果の産物です(そのわりには・・ゲフンゲフン) いや、最近ろくなの書いてないと自覚はしてますよ 自覚 は してるんだって 投石しないで頂けたら嬉しいデス・・・