08.ため息をつく
  「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?ブルース」    振り返らずに、かなり前から立ち位置を変えない彼に送る声。  彼が言いたいことはもう分かっているけれど。   「いい加減、諦めたらどうだ」 「うっさい、黙っててよ」    すげなく言えば、返ってくるのは呆れ気味のため息。  今、彼の顔はきっと眉も口も歪んでる。    っとに、なんて腹立たしい。  こうなったら何が何でも譲れない。  ぜっっったい完成させてやる。    片隅の気合いと共に、手元への集中をさらに高める。   「ここで・・・うん。良し。最後に・・」    一度データから手を離し、小休止。  別になんの意味もないけど、気分的な問題だ。  なんてったって今から取りかかるところが最大の難関なわけで、   「ロックマン」 「黙っててってば!」 「危ないぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」    言われた意味を理解できず、肩越しに見ると黒い指先は僕の手を指していた。  次いで感じた違和感。  持っていたデータが急速な変化、具体的には不吉な振動を始めていた。   「や、ちょ、ま、・・・」    気付いたときには手遅れで。     ボンッ    弾けたあとには意味をなくしたデータの残骸。  不安定なそれは触れただけで消え去り、   「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」    幾度目かの悲鳴。   「遅かったか」 「分かってたなら教えてよ!!」 「言って聞いたか?」 「・・・・・う゛」    確かに。  後ろの彼は正論しか言っていない。正論しか言ってこない。    そう。だからこそよけいに・・・・・・   「っ、ぶるーすのばかぁ!!」 「おい、馬鹿はないだろう、馬鹿は。大体お前のミスだろうが」 「むっつりー、にぶちんー、考えなしぃー」 「あのな・・・」    やれやれと、呆れているのか疲れているのか。  そんな彼の反応も当たり前だと、痛いほど分かっている。  でも・・・でもだ。泣き言を言いたくなるこの気持ちも分かってもらいたい。  なんてったって、この失敗で十回目の大台に乗ったのだ。  もうどこの回路がいけないのかすら見つけられない。   「なんで出来ないんだよ・・・」    右側に開いているのはある画像。  もう細部に至るまで記憶した。見た目はもう完璧なのに。  それがそれであるための、最も重要な部分が作れない。   「はぁ」「ふぅ」    頭を抱えるようにして出したため息が、他のモノと重なった。  同時に頭に軽い重み。    見ればブルースが、くっつきそうな程近くに立っていた。  乗せられた手で、メットの上から結構な強さで撫でられる。   「・・・・・・なにさ」    ずれたメットを直しつつ、ちょっとばかり不機嫌な声で視線だけを向けた。   「見せろ」 「・・・・・・・・・・・・・・・へ?今なんて?」 「手伝ってやると言ったんだ。さっさと見本とさっきのデータをだせ」 「・・・・・うっわ、めっずらしー」    いや、驚いた。てっきり呆れて馬鹿にされているだけかと思っていたのに。  こんな、“手伝う”と言うことを彼が言うなんて。  率直に出た感想に(照れ隠しだろうか)ふい、と視線を横にずらしたブルース。   「そう何度も大声を上げられたら迷惑なんでな」 「実はブルースって優しい?」 「帰る」 「わー待って待って!冗談です、手伝ってください、帰らないでー!!」 「っ、髪をつかむな髪を」    縋るように伸ばした手は、かろうじて離れていく長い髪の毛を掴むことに成功し、 なおもあがく動きに逆らい、渾身の力で手繰り寄せる。  当然の事ながらブルースの方に負荷はいくわけで。   「帰らない?」 「ぐっ・・・・・・帰、らんか、ら、放せ。この体、勢、は辛、い」    上体を捻りながら仰け反らせた体勢から絞り出された声に、渋々両手を放す。  僕から解放されたブルースは、体を元に戻し改めて僕に向き合った。  自分の制作ツールを出す彼を片目に、僕は求められていた画像と自作のデータを展開する。   「これをね、作りたいんだ」    画像は一枚の写真。  浴衣を着た熱斗君が、メイルちゃんたちと一緒に花火をしている写真。  その中で、僕は一部をクローズアップした。    手に一輪。咲いているのは火炎の花。   「線香花火・・か」 「へぇ、知ってるんだ」 「それくらいの常識は持ち合わせているつもりだが」 「でも炎山くん、こんなので遊んだことないでしょ」 「知識と経験は別物だ。これの何に困る?一般ナビならまだしも、お前ならすぐに組めるだろうが」    画像を取り込み、早速制作に取りかかるブルース。  すぐにプログラムは完成し、“線香花火”が出来上がった。  見ていろと、どこまでこる気なのか同時に組んだライターで火を付ける。    ともった小さな火は――爆発した。   「・・・・・・・・・・」    ブルースは、発生した煙のなかで硬直していた。  僕はと言うと半ば予測できていたため、メットガードを持ち出していたりする。   「ね?難しいでしょ」    彼には少し悪いが、少し安心。  同じ事を自分もしたのだ。  ここであっさり完成されてしまっては立場がない。    巻き添えにした事に軽く罪悪感を覚えながら、自分のデータと彼のデータのログを比べる。  が、どちらにもこれといった欠点は見つからない。  何がいけないのか。 不安定に弾ける火と消える寸前に落ちる火玉まで設定しようとすると・・・どうしても暴発してしまうのだ。  結局そのために何度も同じ事を繰り返す事になっている、と言うのが現状。   「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「お〜い、ブルース?」    煙が完全に晴れたというのに未だに固まったまま。よほど衝撃が強かったのだろうか?  ひらひらと目の前で手を振ると、硬直が溶けた代わりに今度は小刻みにふるえ出してしまった。  なんか、明らかに様子が可笑しい。   「ちょっと、どうしたのさ」    万が一にもないだろうが、まさか先ほどの衝撃でどこかの回線に異常をきたしたのだろうか。  ・・・それはやばい。かなり。   「ブルース、一体・・・」 「こっの・・・・・・」 「は?」 「どいてろ、ロックマン」 「え〜と・・」 「この俺にたかが線香花火一つ作れない訳がない」    他人の振り見て我が身を直す、なんてよく言ったもの。  僕の事なんてお構いなしにデータに齧り付き始めたブルース。  暴発を繰り返す彼を見ていると、どことなく空しくなってくる。   「ブルース、・・・もう止めない?」 「邪魔をするな」    制止の言葉に、バイザーに数式を映したまま返事が返ってきた。    とっても身に覚えがある姿。   「なんだかな」    漏れたのはため息。            
長いね、僕にしては(苦笑) 何故冬に線香花火? ってか、花火のプログラミング、難しいのか?(自爆) にわたずみにこんな奇行は日常茶飯事(爆死) 落ちきってないギャグだったり。 そのうち書き直そう・・・。
        わわわわたさんが続き書いてくれたですよ 是非どぉぞ *この先オリキャラ出ます                     →GO☆