08.ため息をつく no.2 
  
  
  
『…何してんの?アンタ達』 
  
  
呆れたアタシの前には、すすにまみれた二人が居た。 
  
  
  
◆◆◆ 
  
  
  
『へぇ…線香花火、ねぇ』 
『結構難しいんだよ、これ!さっきからずっとがんばってるのに…』 
『ブルースまで巻き込んで?』 
  
  
ムー、と口を突き出すロックの説明を聞いて。 
今度こそ呆れた。 
なんかもう呆れた通り越して疲れた。 
相変わらず沸点が低いと言うか、なんと言うか。 
おいおい、と視線を向けると。 
一応バツが悪そうに、ブルースはそっぽを向いている。 
  
  
『…で?これずーっと作ってたわけ』 
『…あぁ、まあな』 
『呆れたもんね、ブルース…アンタともあろうもんが。貸してごらん』 
  
  
今さっき爆発したデータの燃え滓を見る。 
ロックから線香花火の写真データをパクって、ブルースからはログをパクる。 
  
  
『なんでアンタ達みたいな優秀なナビに出来ないかねー』 
『仕方ないじゃんか…どうしても、どうやっても!最後に落ちる玉が出来ないんだよ』 
『あぁ、あれ?綺麗よね〜確かに。難しいし』 
  
  
そのアタシのせりふを聞いて、ロックがブルースを小突く。 
ほら見なよ、というセリフを聞くに。 
どうやら、二人とも同じ所で失敗しているのか。 
  
  
『基本的な軸などは上手くいくのだが…そこだけが上手くいかん』 
『でしょうね。コツがあるのよ、コツが』 
『どんなコツなの?フーガちゃん』 
  
  
流石にスカートで胡座をかくほど、アタシは豪胆じゃない(はずだ)。 
小さな椅子を作って、そこに腰掛けると。 
アタシは早速、線香花火の外観に手をつけた。 
見たところ、二人の外観プログラムに欠陥は無いので、そのまま拝借する。 
  
  
『コツ・そのイチ。高速データの使用よ』 
  
  
表側だけ出来た線香花火をヒョイと放置し、もう一つのプログラムを開く。 
高速データの圧縮プログラムを。 
  
  
『問題は火玉が落ちる瞬間の火薬の暴発。 
なら、急速に軸を焦がし、燃え尽きようとする火玉の熱に耐えうるだけの… 
高速データ処理と、火花が乱流する不定期時間軸の更新処理、ね』 
  
  
火薬のデータを本体の花火に放りこんで、次のデータを開く。 
真剣な目でアタシの手元を見つめる二人に、少しばかり笑いそうになったが。 
アタシは、また本体を放置してデータを呼び出す。 
  
  
『2つ目。火花の散る方向のランダム性の設定。 
玉が落ちそうになる寸前まで、力を拡散させないと…どっちにしろボン、よ。 
なるべく同じ所で力が生まれないようにする事。 
弱くなった所から暴発が始まるからね』 
  
  
同じく、全ての力点から力が生まれるように設定した火薬を、本体に放りこむ。 
  
  
『ロック、電気消して』 
『あ…う、うん!』 
  
  
立ち上がって、脚を揃えて膝をつく。 
線香花火が膝の真上に来ないように、少し前に腕を伸ばして。 
それを、二人がかがんで、囲む。 
  
  
『ブルース、ライター』 
『あぁ』 
  
  
先刻から、ずっと真剣な目をした二人の視線は…アタシ作の、線香花火をじっと見ている。 
多少手の平からずれた位置に差し出されたライターを、なんとか受け取って。 
細くこよりを描いたそれの先端に、ライターの火を。 
  
  
『…わあ…!』 
  
  
ロックの感嘆の声が、暗闇に響く。 
ブルースの方も、ほう、と小さくため息をついたようだった。 
  
線香花火は。 
  
ただ、ぱちぱちと小さな音を立てて。 
  
火花が小さくなり、その火玉が大きくなって― 
  
ぱしゅ、と、落ちるまで。 
  
煌びやかで上品な輝きを、暗闇の中に浮かび上がらせた。 
  
  
『…凄い…凄く、綺麗だね!』 
『…なかなか…美しいものだ』 
『いやー、成功してよかったわ〜』 
  
『……はあぁ!?』 
  
  
二人の盛大な叫びが、大きくこだました。 
  
  
『な…何よ、二人とも』 
『キサマ、ひょっとしなくても今はじめて作ったのか!?』 
『あんなスラスラ説明してたのに!?』 
  
  
急いで空間を明るく設定すると、必死の形相の二人が迫ってきていた。 
  
  
『いや…何となく、ノリで言ったら…あたってたみたいね』 
『納得いくかぁ!!』 
『いいじゃないのよ、ロック、ブルース。さっぱりしたでしょ?』 
  
  
ホホ、と二人をたしなめて。 
アタシは今まで広げていたデータをしまいこんだ。 
  
  
『大きく見るのも大事だけど、小さく的を絞るのも重要って事よ』 
  
  
線香花火の完成版のデータファイルを、ロックの手に持たせる。 
  
  
『イイ暇つぶしになったわ、ロック。アタシ帰るから』 
  
  
これ以上喧しく言われる前に、とっとと帰ろう。 
アタシはそのまま二人に背を向け、プラグアウトした。 
  
  
  
◆◆◆ 
  
  
  
『…ち、逃げ足の速い』 
  
  
忌々しげに舌打ちするブルースに、まぁまぁ、と声をかける。 
  
  
『それよりさ…折角もらったんだし、やってみない?』 
『は?』 
『線香花火』 
  
  
ね?と上目遣いで見詰めると、彼はため息をついて。 
  
  
『…付き合ってやる』 
  
  
しぶしぶ、といった感じは、否めなかったけど。 
それでも、ブルースはぼくの隣りに―片膝をついてくれたのだった。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
にわちゃんのを読んでたら何となくイメージが出てきたんで 
書かせてもらいました 
なんか色々別人 
イメージがあってなかったらゴメン 
でも実際のものをデータ世界に持ち込むのって 
結構難しいとぼくは思う 
 
 
 
 
 
 
=にわたずみ=
きゃぁぁ!!なんて事なんて事なんて事ぉ〜〜!!!(落ち着け)
わたさんに続き書いてもらっちゃったYO☆(壊れ気味)
言い足りないのでこっちでも、
ありがとうございます
いや、線香花火、和ませていただきました☆
感謝感激雨霰♪
今日は枕の下に敷いて寝ます(ヤメレ)