10000番をゲットされた本能寺あすか様に捧げる小説。
あすか様のみお持ち帰り可能です。
ゲーム5設定のバレル×カーネルでお送りします。



<  想い人。>



『やれやれ、参ったもんだ』


バレル愛用のコート、右胸の内ポケット。
私の…と言うよりPETの定位置だ。
ややくぐもって聞こえるバレルの声はかなり疲れた声で。
車が停止したことから、赤信号だと理解する。
私はそれを狙ってバレルに話しかけた。


「あれで見合いをしたというなら、私は毎日見合いをしているようなものだぞ」


私の声が届いたのか、小さく苦笑する気配。
次の瞬間視界は明るくひらけた。
画面の中から見上げれば…苦笑いを浮かべるバレル。


『見合いなんてものは必要ないんだが…上層部からせっつかれるとなぁ…』
「…何を言う、お前もいい年だ。そろそろ真剣に考えるべきだぞ」


けどなぁ、とまだごねるバレルに、私はため息をついた。
…今日、バレルは見合い会場に行った。
行っただけで見合いをしたわけではない。
相手が優秀な軍人だと言うことは前から知っていたのだが
バレルは
見合い先に普段通りの姿で向かい
席につくことなく見合いを断った。


「今はニホンにいるとはいえ、本国に帰ればさらに見合いは多くなるぞ」
『知らんな。こう毎日では正直ウンザリするよ』
「早く家庭を持て。そしてそれを守ることに従事しろ。それが一番だ」


なおも苦笑いの表情を浮かべたまま、バレルはPETをダッシュボードにおいた。
取り付けてあった台座にPETを固定されると
ちょうど向かい合うような位置で視線があう。


『お偉方も同じコトを言う…俺には想い人が居ると言うのに』


信号が青に変わった。
一瞬止まっていた時は動き出し。
ふ、と軽く息をはいたバレルは、それきり黙り込んで車を走らせはじめる。
…想い人。
その言葉がなぜか離れずにつきまとう。


(…女性との出会いがあったか?バレルに)


あ、これは失礼だったか。
声に出さずに思考回路を働かせながらバレルを見つめる。
想い人。
バレルがそう言うのだ、きっと素晴らしい女性に違いない。
けれど、
…だけれども。
それが誰なのか、だとか。
どんな女性なんだ、とか。
そういった言葉が咽喉に引っかかって出てこない。


『カーネル』
「っ…なんだ、バレル」


いつの間にか、また赤信号。
急に呼ばれたような錯覚に陥るほど。
一瞬、思考がどこかに飛んでいたようだ。
急いでバレルの方を向けば…穏やかな色の瞳と、目が合った。


『お前今、失礼なことを考えていたろう』
「…まさか」
『いいや、絶対そうだ。出会いなんてからきしなさそうだしな、俺には』


…解っているではないか。
思考を読まれたことがいささか不愉快で、少しばかりむくれてやると
バレルはそれこそ子どものように、嬉しそうに微笑んだ。

愛するものに対するように。


(……………まさか、)


思わず口元を押さえた私に、またバレルは笑う。
―ようやく気付いたな
そう小さく囁いて。

まさか、そんな。

バレルの想い人は

――私?

急いで目線を上げても、バレルはまた車の運転に目を戻してしまっている。
けれど
その口元は、だらしなくゆるんでいて。
いつもなら呆れ半分に注意していたところだが…
自惚れでなくとも、原因は私ということになるので
仕方なく口をつぐんだ。

最も、私の方もこれ以上ないほどに赤面していて
似たり寄ったりではあったのだが。


信号は、また赤信号。
私は
今度こそ、バレルに声をかけたのだった。












い…いつリクエストいただいたんでしたっけ…!(切腹)
ひたすら平謝りでございます。
すいません、ホント色々すいません。
あすか様のバレカネのような大人の色香が出せませんでした…!
修行不足を痛感しております。
こんな未熟者の作品でよろしければ、あすか様、どうぞお持ち帰りくださいませ!