03:指、もしくは手に 
  
  
  
注意:年齢引き上げ作品。
熱斗18歳、ミヤビ(おおよそ)35歳前後くらいです。 
  
  
  
指に、怪我をしてしまった。 
利き手の人差し指に。 
これくらいならたいした事はないだろう、と高をくくっていたのが間違いだった。 
なかなかどうして不便なもので。 
おまけに傷が深くなったのか、動かすのも億劫なほど。 
癪ではあるが…仕方なく私は、ある男にメールを送ることにした。 
  
  
「ミヤビー」 
  
  
メールを送ったのは少し前だ。 
確か。 
だと言うのに、男…光熱斗は、時間配分を明らかに無視した早さで訪れた。 
玄関の方から響く声に、私は立ち上がろうとして… 
そのまま、畳に倒れ込んでしまった。 
  
  
「ミヤビっ!?」 
  
  
音が聞こえたのだろう。 
引き戸が乱暴に開けられる音。 
おそらく靴を脱ぎ散らかして、そのまま廊下を走ってくる音。 
何とかふせっていた身を起こすと同時に、障子が勢いよく開いた。 
  
  
「…喧しい男だ、全く」 
「ミヤビ、大丈夫か!?」 
「えぇい、静かに話せ!頭に響くわ!」 
  
  
怒鳴った直後に自分の声が返ってきた。 
何倍かの揺れを伴って。 
思わず額に手をやると、そっと抱き込まれて…柔らかな手つきで髪を撫でられた。 
  
  
「っ…」 
「…夏カゼってバカがひくんだろ?」 
「……喧しい…」 
  
  
まるで頭で鐘をついたようだ。 
冗談ではなく本当にそう思うような頭痛。 
幸い熱が低めなのはよかったが、それでも低体温の私には高い熱。 
なんとか布団の上に座り込むと。 
熱斗も座り込んで、私の顔を覗きこんできた。 
そっと額の手をどかされて。 
額どうしをつけられる。 
  
  
「近く通ってる時でよかった…熱と…頭痛と、後は?」 
「それくらいだ。ただ…少しのどが痛い」 
「…指、怪我してるじゃん」 
  
  
目敏く指に巻かれた包帯を見つけられて。 
少し血の滲んだ包帯を、簡単に外される。 
と、自分の予想以上に深く開いた傷口が視界に入った。 
  
  
「おいおい…何したらこんな深く切るわけ?」 
「…飯を作ろうとして失敗した」 
  
  
罰が悪くて顔を背けると、小さく苦笑される。 
その後、今度は呆れたようにため息をついた熱斗は。 
次の瞬間…私の手をとって。 
躊躇いなく、指先を口に含んだ。 
  
  
「…んっ…!」 
  
  
いきなりの事で構えていなかった私は、思わず声を漏らしてしまう。 
やんわりと吸い上げられて、傷口に固まる血を溶かされる。 
傷口を直に舐められているわけではない。 
それでも、ジクジクとした嫌な痛みが指先から生まれてくる。 
それは次第に…もどかしい感覚をつれてきた。 
ぬるり、と。 
熱く濡れた舌が、指先から根本までを辿っていく。 
ぞく…と背筋を這う快楽。 
生々しい水音にきつく目をつむり、もう片方の手で布団を握りしめた。 
そうしていないと…身体の全てを、熱斗に浸食されてしまいそうで。 
  
  
「…熱、斗」 
「消毒。これ、切ってからまた動かしたろ」 
「熱斗っ…もう、離せ…!」 
「だめ。ミヤビはすぐ無茶する」 
  
  
手を取り返そうとしても、熱のせいで身体があまり動かない。 
ちゅ。 
ひどく甘ったるい音とともに、指先に口付けが降る。 
次には、寝間着代わりの白い着物の腰紐が解かれて。 
胸元から太股のあたりまでが外気にさらされた。 
  
  
「熱斗…」 
「汗かいて水飲んで飯を食う。風邪の必勝パターンだろ?」 
「…結局は、ヤりたいだけだろうが」 
「そ。だってミヤビが悪い」 
  
  
―オレがミヤビのこと大好きなの知ってて、それでも色気ふりまくんだから。 
恨みがましい視線とともに、もう一度指先に口付けが降る。 
そのような事…私の知ったことではないと言うのに。 
  
  
「何で風邪ひいたんだよ」 
「…滝に打たれて瞑想していたら」 
「いたら?」 
「……思いの外長く水に浸かってしまったようだ」 
  
  
ゆっくりと布団に横たえられる。 
その間に何度も口付けられながら、かわすのは戯言のようなもの。 
なんとか確信に迫られないように、こちらからも口付けを仕掛けた。 
  
  
「長く、って…オレのこと、考えてたから?」 
「……馬鹿者っ」 
  
  
覗き込んでくる瞳は楽しそうに輝き。 
微笑む口元はいたずらが成功した子供のそれ。 
結局のところ、私はこの子どもにはかなわない。 
よく知っている。 
この男が、世界中から守られていることを。 
  
  
「じゃ、お詫びしないとな〜オレのせいだし」 
「都合のいい奴だ」 
「ミヤビ、大好き」 
  
  
噛み合わない会話を続けながら。 
それでも。 
この男になら…と思ってしまう自分が憎らしい。 
  
まあ、つまり。 
風邪はしっかりと治った(治された)わけだが。 
またいつ看病できるか、と熱斗が狙っているのを知っていて。 
そんな自分の煩悩を払うために滝にうたれ。 
…振り出しに戻ってしまったのは、言うまでもない。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
ようやく時間が出来て書いた結果がこれです 
やっちまった…ミヤビ受やっちまった…! orz 
ミヤビ別人 
熱斗に至ってはもはや別次元(なんだそれ) 
アニメ見たら歯止めがかからなくなりました 
だってアレだけいじられたらねぇ… 
そのうちデカディンデカ書きそうで怖いです