06:際どいところに 
  
  
  
「シャドーマン」 
「なんだ」 
「…いや、呼んでみただけ」 
  
  
オレの隣でひたすら刀を研ぐシャドーマンに声をかけてみるけど。 
すぐに言葉を引っ込めた。 
だってここは、ディンゴのPET内の空間だ。 
いつディンゴに声をかけられるとも限らない。 
だから不用意な発言はやめようと思って。 
なのに、シャドーマンは見逃してはくれなかった。 
  
  
「何用だ」 
「だから…呼んだだけだっつーの」 
「嘘をつけ、言うてみい」 
  
  
せっかく我慢したのに。 
シャドーマンはそっぽを向いたオレの正面にわざわざ回り込んで。 
胡座をかいたオレの膝に、コロン、と頭を寝ころばせた。 
  
  
「何が望みだ?トマホークマン」 
  
  
下から見上げてくるエメラルドの瞳。 
オレの脚に頬をすり寄せて、背中を丸めて小さくなる姿。 
理性が飛びそうになる。 
細められた嫌味な表情を浮かべる眼。 
ギアに隠されてるけどきっと笑ってる口元。 
余裕しゃくしゃくな、大人の空気。 
  
  
「っ…シャドー、マン」 
「何だ」 
「やめろって…ディ、ディンゴがっ」 
  
  
普段なら絶対にない甘えた仕草。 
正直…ギャップの大きさが、可愛いと思えてしまう。 
自分を制御できないのが情けない。 
けど、本当に可愛い。 
すり寄ってくるのを見ていられなくて、急いで目線をそらす。 
何考えてるんだ。 
いつ見つかってもわかんないくらい、危ない場所なのに。 
向こうは…まるで気にしていないような。 
  
  
「…クク…欲しいのであろう?拙者が…」 
「…っ!?」 
「遠慮せずともよかろうに…」 
  
  
ちゅ… 
甘ったるい水音、柔らかな感触。 
驚いて思わずシャドーマンを見ると。 
いつの間に外したのか、ギアのない口元はやっぱり嫌味に笑ってて。 
その月のように弧を描いた唇が。 
ゆっくりとオレの内股に押し付けられて…離れていくところだった。 
  
  
「シャド…!」 
「したかったのであろう?…違うか?」 
  
  
上体を起こしたシャドーマンは、オレの首に腕を回して。 
しなだれかかるような姿勢がかなりやらしい。 
下から見つめてくる瞳がふっと細められた。 
  
  
「そちらが何もせぬのなら、こちらからいくぞ?」 
  
  
そのきれいな顔に…本当にきれいな笑みを浮かべて。 
  
  
「んっ…!?」 
「…ん、ふ…ぁッ」 
  
  
いきなりの深いキス。 
少し細められたシャドーマンの目元は、ほんのり赤く色づいていて。 
反射的にその細い身体を抱きしめる。 
  
  
「あ…んっ、んぅ…」 
  
  
息継ぎの合間に漏れる声が…オレをどんどん溺れさせてく。 
滑り込ませた舌で、シャドーマンの舌を誘い出して。 
軽く噛んで…先端をなぶってやる。 
オレの精一杯の攻撃にも余裕の態度は崩れない。 
結局息が苦しくなって唇をはなすのはオレの方。 
少し荒くなった息を整えながら、シャドーマンを抱きしめる。 
オレの肩に顔を埋めたシャドーマンの口元は…ニヤリ、と笑みを浮かべていて。 
  
  
「…ン」 
「ちょ、ぅえっ!?なにするんだよっ!」 
「フン…拙者を馬鹿にするからだ」 
  
  
首筋の装甲とスーツの間。 
ちょうど耳の羽飾りに隠れるか否か、というところに。 
…データの破損。 
  
  
「だー!ヤバイじゃん見えたらっ!」 
「問題なかろうて」 
「あるっつーの!」 
  
  
人間で言うところのキスマーク。 
単なるデータの破損でしかないけど、こんな隠れた所には普通できない。 
ディンゴに見つかれば疑問に思うはずだし…何より質が悪いのは。 
  
  
「ま、消えるまで努力することだな。見つからんように」 
  
  
クク…と嫌味に笑って、シャドーマンが立ち上がる。 
…そうなんだ。 
あまりにも微細な破壊だから、自然修復に任せるしかないんだよ。 
  
  
「性格悪いっ」 
「惚れた者の負け、と言うであろうに」 
「…うるせぇ」 
  
  
最後にオレの額に小さくキスして、シャドーマンはいつものギアをつける。 
実の所シャドーマンからキスしてもらえただけで。 
かなり嬉しかったんだけど。 
  
  
「早くオペレーターが成長するといいな」 
「…どーゆう意味だよ」 
「抱かれてやってもいいと思わせてみろ、拙者に」 
  
  
露骨な表現にオレが赤面したのと。 
ディスプレイにディンゴの顔が映ったのは同時。 
  
  
『トマホ…どうしたんだ、真っ赤になって』 
「なんでもねぇ!」 
『そうか?あ、今日ミヤビの家に泊まるからって、日暮さんにメールして』 
「は…!?」 
『後、青年化ウイルスがはやってるから気ぃつけろよ』 
  
  
今まで見た中で一番の笑顔のディンゴは、一方的に喋って通信を切った。 
キスマークに気づかれなくてよかった、とは思いながらも。 
残されたオレは。 
やたら嬉しそうな様子のシャドーマンを睨むことしかできなくて。 
  
  
「…狙ってたな」 
「まぁ…お館様ならやるだろうと思うての」 
  
  
涼しい顔のシャドーマンに、オレは頭をかかえた。 
最悪の状況だ。 
  
  
「まだまだ主導権をとれると思うなよ、小童が」 
  
  
勝ち誇ったような笑みを浮かべるシャドーマンに。 
オレは。 
せめてもの反撃に、噛みつくようなキスをした。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
えーと、ゲームの5設定で 
日暮さんの家にディンゴは居候中 
ミヤディン前提のトマシャドでしたー 
って最初に言おうよ。 
今回のテーマはいかにシャドーをエロくするかでした。 
エロエロお姉さまにしたかったんです、ハイ。 
これあくまでもシャドー受けなんで! 
あくまでも!!
ゲームのトマホークのイメージがいまだにつかめません。 
もう一度ゲームやり直そうかしら。