04.ネットバトル
 0と1の街を私は歩く。  青い上方に光源はなくとも、この世界は常に明るい。  此処で蠢く数多のネットナビは、個々に与えられた指令に従い移動を繰り返す。  そして私は捜す。  実在すら怪しい、遁走曲の姿を。       「止めだ止め。アンタ強いねぇ」    ――ヘリコプターに変化してとどめの一撃から逃れたナビ。   「逃げるのか」 「ヤベェ事はしたくなくてね、ここいらでお暇させてもらうよ」    ――逃がすつもりはなかった。あの一言さえなければ。   「待った。とうやら強いヤツをお捜しのようで。ここで取り引きさせてもらえないか」 「・・・・・・」 「アンタより、もっと強いヤツをオレは知ってる」 「・・・・・・言え」    ――嘘か誠か。だが以前聞きかじった情報と同じならそれもいいと。   「遁走曲っつーナビを聞いたことないか?このエリアは、やっこさんの“島”だ。運が良ければ会えると思うぜ」    ――そして、   「じゃぁな、カプリチオ」    ――いつからか付いた私のもう一つの名を置いて、奴は空へ消えた。        それが三日前。    あの瞬間から、  狂想曲は遁走曲を求めだした。               →NEXT